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2020年8月17日月曜日

メルマガ戯曲「少女Aと探し物へ」 その4

その1から読んでね、そしてなんとここまでで第1章なんですよ、意外と長いのよ。



メルマガ戯曲「少女Aと探し物へ」 その4


リース: 「え!いや、あははって」

少女A: 「だってないんだもん」

リース: 「えー」

少女A: 「うん、まぁ仕方ないね!」

リース: 「いや、まぁ仕方ないね!って、うん、いやぁ、え、でもあれ大事なんじゃない?

     だって覚えてるの、なに書いてあったか?」

少女A: 「(しらっと)なにが?」

リース: 「メモになにが書いてあったか覚えてるのって」

少女A: 「(しらっと)ん?ごめんごめん、なに?」

 

     短い間。

 

リース: 「嘘でしょ」

少女A: 「(しらっと)えー、だから、なに?」

リース: 「覚えてないんじゃん、あんた、メモの中身、覚えてないんじゃん!」

 

     それまで二人の話を聞いてないように見えたリョウポートが、

 

リョウポート: 「(静かに)ワットゥ?」

 

     短い間。

 

少女A: 「(真顔で)ノンパリの人たちはオシャレですね、どこで服買ってるんですか」

 

     短い間。

 

リース: 「あんたなにを・・・」

リョウポート: 「アニエスベー」

 

     短い間。

 

少女A・リース: 「まぢで?」

リョウポート: 「マヂマヂ」

少女A: 「フランス人って本当にアニエスベー着るんだ」

リョウポート: 「なんならフランスのギャップ的な立ち位置です」

少女A・リース: 「まぢで?!」

リョウポート: 「マヂ」

少女A: 「なんか、急に庶民感」

リース: 「わかる」

少女A: 「そうか、もっと気軽な感じなんだなアニエスベー!なんだそっか〜へーなるほど

     ね〜」

リース: 「そうだね〜!っていうか!どうすんの!メモ!」

少女A: 「わかんない!」

リース: 「覚えてないんでしょ?」

少女A: 「あっ!戻ればいいじゃん!なんだ私天才」

リース: 「どうやって?」

少女A: 「成田凌に頼んで」

リース: 「えーあいつに頼むのなんか癪に触る。絶対文句言うぜ?」

少女A: 「すいません、リョウポートさん、忘れ物したんで戻りたいです、ギョギョギパー

     クに」

リョウポート: 「(静かに)ワットゥ?」

少女A: 「うんだから、一旦戻りたいです、ギョギョギパークに」

リョウポート: 「(静かに)ワイ?」

少女A: 「わい?私?」

リース: 「なんでって」

少女A: 「あだから、忘れ物を取りに」

リョウポート: 「(カットオフして)ノン インポッシブルです」

少女A: 「ワイ?」

 

     この咄嗟の返事にリースが、少女Aを見直す。

 

リース: 「うまい」

少女A: 「へっへっへ」

リョウポート: 「ビコーズ、我々は過去へは戻らない、進むだけなのです、フューチャーに」

 

     間。

 

少女A: 「うん言ってることはすごいカッコイイんだけど、あれがないと困るんだよ」

リョウポート: 「ワイ?」

少女A: 「えーっと、いやぁ、うん、ちょっと思い出せないんだよねぇ、うん」

リョウポート: 「ワイ?」

リース: 「いやそこは『ワイ?』じゃなくない?」

リョウポート: 「(ちょっと赤面して)ワットゥ?」

リース: 「いやちょっと赤面って」

少女A: 「いやあのぅ、メモの、中身を。何かを探すはずなんだけど、なんだっけなぁって

     思って」

リョウポート: 「つまり、旅の目的がわからなくなった、と?」

少女A: 「ウィ!」

リョウポート: 「ワイ?」

少女A: 「ワイ?って?」

リース: 「なんでって」

少女A: 「うん、ワイ?の意味はわかってる」

リース: 「お、おぅそうか」

少女A: 「なんで?って?」

リョウポート: 「旅の目的がわからなくなったのは、ワイ?って」

少女A: 「あ、だから、メモを落としちゃったみたいなんです、旅の目的を書いた」

リョウポート: 「で?」

少女A: 「で?あ、で、そのメモに目的っていうか、何かを探せって書いてあったと思うん

     だけど、思い出せないから、そのメモを取りに帰りたいってわけなんです」

リョウポート: 「なるほど。でも、アン、我々は過去へは戻らない。

        ドゥ、フューチャーに進むだけ。

        トロワ、メモがなくても旅は続ける。

        ビコーズ、目的がなくても旅は続けられる」

 

     短い間。

 

リース: 「おぉぉぉぉ、成田凌まぢでちょーカッコイイんだけど」

少女A: 「いやカッコイイけどさ、無理じゃね?どうやって続けるの?」

リョウポート: 「前にゴーするのです、自分の足を一歩ずつ、とにかく前へ」

リース: 「おぉぉぉぉぉっカッコイイっ!!!」

少女A: 「でもさ、どっちにゴーしたら良いかわからないんだよ?一歩出せないじゃん」

リョウポート: 「一歩は出せます、前に足を出せば良いのです」

少女A: 「いやそりゃ物理的にはそうだろうけどさ」

リョウポート: 「それしかないのですよ、ユーたちも、ミーも、とにかく一歩ずつ前に足を

        出してゴーするしかない」

少女A: 「どっちにゴーしたらいいかわからない時は?」

リョウポート: 「目をクローズして、一歩だす」

少女A: 「か、賭けじゃんっ!」

リース: 「面白そう!」

少女A: 「え?」

リース: 「面白そうじゃん、やってみようよ」

リョウポート: 「とにかく一歩前にゴーする、違ったなと思ったら、また違う方へゴーして

        みる。間違えたら、そこからまたゴーしなおせば良いのです。それを続けて

        いるうちに、きっと、ユーが探しているものは見つかるはず」

リース: 「(しみじみと)はぁカッコイイ」

少女A: 「その探し方だとさ、すごい時間かかりそうだよね」

リョウポート: 「時間がかかっちゃいけない理由はありますか?」

 

     短い間。

 

少女A: 「特にない」

リョウポート: 「それに、ゴーし続けるうちに、わかるはずです、どこに向かえばいいのか、何を探しているのか」

少女A: 「そうかなぁ」

リョウポート: 「だから、ゴーし続けるのです。間違えたら、また違う方に向かってゴーす

        れば良い、それだけです。何にも難しいことはないでしょう?」

少女A: 「たしかに」

リース: 「うん、面白そうだよ」

少女A: 「うん。ゴーしてみようか」

リース: 「うん」

 

     少女Aとリース、向き合って照れ臭さそうに頷きあう。

 

リョウポート: 「まずは、ベルサイユ宮殿入館チケットを買いましょう」