その1から読んでね、そしてなんとここまでで第1章なんですよ、意外と長いのよ。
メルマガ戯曲「少女Aと探し物へ」 その4
リース: 「え!いや、あははって」
少女A: 「だってないんだもん」
リース: 「えー」
少女A: 「うん、まぁ仕方ないね!」
リース: 「いや、まぁ仕方ないね!って、うん、いやぁ、え、でもあれ大事なんじゃない?
だって覚えてるの、なに書いてあったか?」
少女A: 「(しらっと)なにが?」
リース: 「メモになにが書いてあったか覚えてるのって」
少女A: 「(しらっと)ん?ごめんごめん、なに?」
短い間。
リース: 「嘘でしょ」
少女A: 「(しらっと)えー、だから、なに?」
リース: 「覚えてないんじゃん、あんた、メモの中身、覚えてないんじゃん!」
それまで二人の話を聞いてないように見えたリョウポートが、
リョウポート: 「(静かに)ワットゥ?」
短い間。
少女A: 「(真顔で)ノンパリの人たちはオシャレですね、どこで服買ってるんですか」
短い間。
リース: 「あんたなにを・・・」
リョウポート: 「アニエスベー」
短い間。
少女A・リース: 「まぢで?」
リョウポート: 「マヂマヂ」
少女A: 「フランス人って本当にアニエスベー着るんだ」
リョウポート: 「なんならフランスのギャップ的な立ち位置です」
少女A・リース: 「まぢで?!」
リョウポート: 「マヂ」
少女A: 「なんか、急に庶民感」
リース: 「わかる」
少女A: 「そうか、もっと気軽な感じなんだなアニエスベー!なんだそっか〜へーなるほど
ね〜」
リース: 「そうだね〜!っていうか!どうすんの!メモ!」
少女A: 「わかんない!」
リース: 「覚えてないんでしょ?」
少女A: 「あっ!戻ればいいじゃん!なんだ私天才」
リース: 「どうやって?」
少女A: 「成田凌に頼んで」
リース: 「えーあいつに頼むのなんか癪に触る。絶対文句言うぜ?」
少女A: 「すいません、リョウポートさん、忘れ物したんで戻りたいです、ギョギョギパー
クに」
リョウポート: 「(静かに)ワットゥ?」
少女A: 「うんだから、一旦戻りたいです、ギョギョギパークに」
リョウポート: 「(静かに)ワイ?」
少女A: 「わい?私?」
リース: 「なんでって」
少女A: 「あだから、忘れ物を取りに」
リョウポート: 「(カットオフして)ノン インポッシブルです」
少女A: 「ワイ?」
この咄嗟の返事にリースが、少女Aを見直す。
リース: 「うまい」
少女A: 「へっへっへ」
リョウポート: 「ビコーズ、我々は過去へは戻らない、進むだけなのです、フューチャーに」
間。
少女A: 「うん言ってることはすごいカッコイイんだけど、あれがないと困るんだよ」
リョウポート: 「ワイ?」
少女A: 「えーっと、いやぁ、うん、ちょっと思い出せないんだよねぇ、うん」
リョウポート: 「ワイ?」
リース: 「いやそこは『ワイ?』じゃなくない?」
リョウポート: 「(ちょっと赤面して)ワットゥ?」
リース: 「いやちょっと赤面って」
少女A: 「いやあのぅ、メモの、中身を。何かを探すはずなんだけど、なんだっけなぁって
思って」
リョウポート: 「つまり、旅の目的がわからなくなった、と?」
少女A: 「ウィ!」
リョウポート: 「ワイ?」
少女A: 「ワイ?って?」
リース: 「なんでって」
少女A: 「うん、ワイ?の意味はわかってる」
リース: 「お、おぅそうか」
少女A: 「なんで?って?」
リョウポート: 「旅の目的がわからなくなったのは、ワイ?って」
少女A: 「あ、だから、メモを落としちゃったみたいなんです、旅の目的を書いた」
リョウポート: 「で?」
少女A: 「で?あ、で、そのメモに目的っていうか、何かを探せって書いてあったと思うん
だけど、思い出せないから、そのメモを取りに帰りたいってわけなんです」
リョウポート: 「なるほど。でも、アン、我々は過去へは戻らない。
ドゥ、フューチャーに進むだけ。
トロワ、メモがなくても旅は続ける。
ビコーズ、目的がなくても旅は続けられる」
短い間。
リース: 「おぉぉぉぉ、成田凌まぢでちょーカッコイイんだけど」
少女A: 「いやカッコイイけどさ、無理じゃね?どうやって続けるの?」
リョウポート: 「前にゴーするのです、自分の足を一歩ずつ、とにかく前へ」
リース: 「おぉぉぉぉぉっカッコイイっ!!!」
少女A: 「でもさ、どっちにゴーしたら良いかわからないんだよ?一歩出せないじゃん」
リョウポート: 「一歩は出せます、前に足を出せば良いのです」
少女A: 「いやそりゃ物理的にはそうだろうけどさ」
リョウポート: 「それしかないのですよ、ユーたちも、ミーも、とにかく一歩ずつ前に足を
出してゴーするしかない」
少女A: 「どっちにゴーしたらいいかわからない時は?」
リョウポート: 「目をクローズして、一歩だす」
少女A: 「か、賭けじゃんっ!」
リース: 「面白そう!」
少女A: 「え?」
リース: 「面白そうじゃん、やってみようよ」
リョウポート: 「とにかく一歩前にゴーする、違ったなと思ったら、また違う方へゴーして
みる。間違えたら、そこからまたゴーしなおせば良いのです。それを続けて
いるうちに、きっと、ユーが探しているものは見つかるはず」
リース: 「(しみじみと)はぁカッコイイ」
少女A: 「その探し方だとさ、すごい時間かかりそうだよね」
リョウポート: 「時間がかかっちゃいけない理由はありますか?」
短い間。
少女A: 「特にない」
リョウポート: 「それに、ゴーし続けるうちに、わかるはずです、どこに向かえばいいのか、何を探しているのか」
少女A: 「そうかなぁ」
リョウポート: 「だから、ゴーし続けるのです。間違えたら、また違う方に向かってゴーす
れば良い、それだけです。何にも難しいことはないでしょう?」
少女A: 「たしかに」
リース: 「うん、面白そうだよ」
少女A: 「うん。ゴーしてみようか」
リース: 「うん」
少女Aとリース、向き合って照れ臭さそうに頷きあう。
リョウポート: 「まずは、ベルサイユ宮殿入館チケットを買いましょう」